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歴史観について2

歴史観

世に「戦後民主主義」と言う言葉がありますね。日本の敗戦に端を発し、GHQの統治方針ともあいまって、過去の歴史の否定行為が蔓延した。とまあ概ねそう言ったあたりが、弊害として語られていますね。

 あるいは、ウォーギルトインフォメーションプログラム(以下WGIP)と呼ばれるGHQによる一連のプロパガンダにより贖罪意識を刷り込まれた、そう主張する向きもあります。あるいはまた、70年代の朝日新聞とNHKの中国・北朝鮮礼賛キャンペーンが一番の影響だと言われるかもしれません。あるいはまた教科書問題に代表される、日教組色の濃い歴史教科書が若者に悪い影響を与えているのだと。

 ただ、どちらにしろ戦後のこれら平和絶対主義的な風潮は、もともと日本人の嗜好として潜在的に存在してあるのだと思います。それが敗戦による虚無感で思考が停止している時に、外界と情報が遮断され、アメリカの一方的なプロパガンダ攻撃を浴びて、怪物のように力を得たと。それが後に学生運動の左翼的潮流が世界を覆っていた頃に、メディアの中でも復活を遂げたというところでしょうか。

 この絶望的に暗い思想の潮流は、日本の歴史の言わば影の部分と言うべきものです。古くは律令時代にすでにあり、古事記や日本書紀が改変した部分が良い例ですし、平安時代に支配層が武器を捨てて自分たちは手を汚さないようにしたのも同じ意識が流れています。今の時代は、過去に何度か繰り返されてきた、この絶対平和、軍事忌避のサイクルが、再び隆盛を迎えているのだと、私は考えています。

もちろん平和が一番ですが、それが日本人自身の手で勝ち取られたものではないため、現実との整合性がつかない理想論から抜け出せないのかもしれません。象徴的な例としてよく持ち出されるのが現行憲法ですね。本国アメリカで力を失ったニューディール派の置き土産ですが、その一字一句には一切手をつけられず、解釈のみ許されるという宗教の教義のような存在になっているためそう見られるのでしょう。

それからこうした平和信仰は戦争被害の大きかった町ほどこの傾向が強くみ受けられます。東京、大阪、広島、長崎、沖縄などの都市が、いわゆる左翼の牙城でもあるのですが、その土壌はこれらの背景が強く感じられるところです。


アメリカ主義


逆コースという言葉がありますよね。戦後の左翼路線の脱却として、日本占領期、民政局との争いに勝ったG2主導の日本再生路線(実際には対ソ政策ですが)がとられ、共産主義陣営、左翼陣営からはアメリカ、あるいは日本政府の陰謀であるとして、こう呼ばれたわけです。

これも、GHQ内の派閥争い、ホイットニーとウィロビーの権力争いという単純な構図だけでは当然なく、民生局側のソ連による工作や大戦時のアメリカ首脳部、ルーズベルトの側近がロシアの諜報員で固められていたのは有名ですし、G2側も裏政治史にあるように対抗策をとっています。

もともとは、アメリカもプロパガンダ下手の国だったんですが、アメリカを対独戦に引き入れるためイギリスの情報部が力を貸し、部局の設立をはじめ、ノウハウを徹底的に叩き込んでいます。また最近発見された資料(延安リポート)では、中国の延安、ここは日本人捕虜の思想改造を施していたところですが、そこを視察して対日戦の訓練も行っていますね。

欧米諸国が大航海時代と呼ぶ、植民地収奪競争の歴史の中で、初めて有色人種が白人国家、それも大国ロシアが敗れた衝撃は黄禍論の再燃を呼ぶことになります。ただ日本に対する彼らの感情というのは単なる憎悪や敵視だけでもありません。従順ならざる唯一の日本人ならぬ、唯一の有色人種の国として、日本だけは特別な存在として認めよう、白人側に取り込もうという雰囲気も一部で醸成されています。

またアメリカの特に支配階級層が日本を異常に恐れているのは、先の戦争の贖罪意識という側面も見逃せません。アメリカの建国の歴史というのは、先住民であるインディアンの徹底的な根絶に始まるわけですが、この後ろめたさは日本に対しても抱いています。ただインディアンは、ゲットーよろしく居住地に押し込められ、目に触れないようにされていますが、日本は当時世界の覇権を争うライバルであったという違いがありました。そして徹底的な空襲や原爆によっても国家を消滅させることが出来なかった。

これがもしまた力を取り戻すと、当然自分たちに復讐するだろうと考えていたようです。GHQの統制下で特に厳禁とされたのが、芝居などの仇討ち討ちものでしたし、原爆虐殺に関してもなんやかやの理由をつけて正当化しています。これは今でも同じで原爆ドームの世界遺産の登録にも最後まで反対していましたね。

日本には中国のような意味での王朝交代がなかったこと、他民族に征服された経験がなかったこと、大規模な(日本全土を巻き込む)戦乱がなかったこと(唯一戊辰戦争がそれに近いですが)などのかなり特殊な歴史を持つ国です。また、建国以来6年半のGHQによる占領統治期を除いて外国に占領されたことがない。そういった日本においてWGIPのようなプロパガンダ作戦は前例の無い事だけに、今とは比較ならないほど素直に受け入れられたのでしょう。

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