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ヒトの進化

ヒトの進化

ヒト以前とヒトとを分かつ基準は、今のところ直立二足歩行への移行とされている。これが始まったのが約500万年前だが、現在発見されている最古の道具は、もう少し時代を下った約250万年前頃のようだ。だから、正確にいえばまず二足歩行への移行が始まり、次いで道具や言語をヒトは獲得してきた、ということになる。

 二足歩行の始めは、ゴリラなどに見られる「拳歩き」に近いもので、手の骨も道具を上手に操れるほど器用には出来ていなかったようだから(この辺は、埴原和郎「人類の進化・試練と淘汰の道のり」に詳しい)、樹上から地上への移行は何らかの骨格の突然変異によるもので、彼らの生存にとっては当時決して有利な出来事ではなかったようだ。

 そのような厳しい生存条件と闘う中でヒトは直立へと向かい、それが脳容量の増大や言語を発しやすい咽喉の構造変化を促して、知能と社会の発達が実現した。そして同時に、骨盤の変化による育児負担の増大も含めて、闘争と生殖という雄雌の役割分化が一層進んでいった。

 従って、初めから脳容量を増大させて、観念機能を発達させるということはなかったと思われるが、直立することにより脳容量の増大を支えられる身体的構造を獲得したこと(しかしこれは必要条件に過ぎない)、直接的には根源的な適応欠乏に導かれて、唯一残された武器である共認意識(サルの知能進化もこれによる)をフル回転させたことが、脳容量の急速な増大をもたらしたと考えられる。

 直立二足歩行にしろ、脳容量の増大にしろ、進化のための変化はどんな場合もある目的のためにそうなったのではなく、環境の変化に対し、その新たな環境に対応する為に先ずは多様な新種が発生し、その中でたまたま環境に適応する種の形態が残ったと考えるほうが理にかなっている。でなければ、環境に適応するためのある方向性が始めから定められているなら、種はみんなその形態にしか進化しないことになる。


進化は続く


 では直立歩行が環境の変化に対しどういう点で有利だったか。  森林の範囲が減少し、サバンナ化が進んだ時代、したがって「上るための木が減った」ため、地上での生活を強いられる様になった。そこではもちろん樹上逃避はできないため、より早く敵を見付ける必要がある。そして見つけた敵を仲間に伝える必要がある。それでも逃げることが出来なかった時のために、敵と戦う武器を掴まなければならない。

 これらに適したものが直立二足歩行であり、その為の体のバランスをとりやすくするために足の指は先祖帰りし、両手が自由に使えたので武器を手に持てた。こうして最もその環境に適応しやすい形態がとられていった。

 さらには言語の発達も、捕れる獲物が少なくなった時に、より遠くの獲物の存在を遠くの仲間にも伝えるために、発声機能に有利な骨格の種が生き残り、情報伝達量が飛躍的に増大し、またその後の観念機能の更なる発達にも有利だったといえるのではないか。

 生きとし生けるものは、全て環境に対する適応態として存在している。  その無数の可能性の内、環境適応態たり得る可能性は極めて低いが、しかし決して唯一ではなく、幾通りもの適応の仕方=進化の方向が存在する。と同時に、完全なる適応態など存在せず、全ての適応態は外部世界に対する不完全さをはらんでおり、それ故より高い適応を求めて進化を続けてゆくことになる。

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