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言語の発生

言語の発生

 「言語」の発生に関しては、単一起源説と複数多起源説があるが、単一起源説の方が優勢であるように覚えている。
 英語と日本語では文の構造が全く違うではないか、と言う人もいるかもしれないが、話題・主体を示す「主語」、それについて最も言いたいことを述べる「述語」、そのそれぞれを説明する「修飾語」、それらの関係を決める「接続語」があるという点で共通しており、語順が異なるという違いに過ぎない。

 英語は、印欧語系のなかで最も単純な言語である。部族・民族がまとまりを持って到来するのではなく、小規模の集団ー氏族単位で長期間をかけ、緩慢に漸進的にユーラシア大陸の西の吹き溜まりブリタニアに移住したアングローサクソン系諸族は既に居住していたケルト系、後に到来したデーン、ノルマン系と抗争しつつ共存し、混交した。

 そこにおいて互いの意思疎通のための言語は複雑であってはならなかった。現在の英語では、格にしても主格・所有格・目的格の三つしかなく、格変化は人称代名詞に留まっている。ドイツ語におけるような、すべての名詞・代名詞、冠詞に及ぶ4つの格変化、分綴、名詞の性はない。

 ラテン語では、名詞の六つの格変化・性、主語による動詞の語尾変化(英語は三単現のーs・ーesのみ)、それに加えて時制変化、さらに語尾変化によって格や主語がわかる故に、会話・文において概ね主語を明示することもなく、語順による構成も決まっていない。
 日本語の場合は、助詞によって語の役割が決まり、それゆえに語順における厳格さをそれほど持たない。

 Quo vadis,Domine?=Where do you go,Lord?

ここに主語に当たるyou はない。ーisが、主語が2人称単数であることを表しているからである。(I go.なら、vadeo.である。)Domine はDominus の呼格。

 しかし、いずれにしても、世界のすべての言語は、主体・話題、主題、説明、接続 の部分から成り立っている。単語や語順の違いや省略、語尾変化など多様であるにしても、である。

 それゆえに、われわれは諸言語を学習できるのである。
 人が人に何かを伝えようとするとき、必要とされるのが主体・話題、主題、説明、接続の働きの語句であるのは、すべての人間に共通しているからである。


言語が先かそれが問題だ


 初めは、「鹿、いない。」というものから、生活圏の広がり、時間的蓄積から「昨日、黒い、大きい鹿が、向こうの森に、たくさん いたらしい。しかし、今日は、一頭も いないようだ。」にいたる。

 正確に伝えようとする努力・営為が語彙の豊潤化と文構造の精密化を産む。もちろんその過程がそれぞれの社会の生産・生産構造のあり方・変化の過程であることはいうまでもない。言語は生活のためのものであるからだ。

 人間はもともと「発音器官」があるわけではない。進化の過程を考えると、口や舌やのどは、本来は「そしゃく器官」、物を食べるためのものであり、「呼吸器官」、息するためのものだ。

 ものを食べたり、息を吸ったりするときに、ある種の音声が「声」として、コミュニケーションの中で利用されるようになったのだろう。 人類に関しては言語と認知が密接な関係を持っているということそのものには論議の余地はないように思うが、認知が言語の前提条件かという因果関係については、未だ結論は出ていないようだ。

 近年では、言語を認知発達を基盤にした乳児期におけるコミュニケーション機能が発展したものとしてとらえる語用論の立場が脚光をあびてきている。言葉を発する時には当然、伝えたいという思いや伝えたい内容が存在するわけで、この語用論の立場では、整った言語体系の獲得ということよりも、伝達意図や伝達内容の方に重きを置いている。

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